第1回『魔法使いのお留守番(上)』/大友花恋「柑橘の文字をかじる」
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おおとも・かれん●1999年10月9日生まれ、群馬県出身。雑誌「MORE」専属モデル。ABEMA「今日、好きになりました。」レギュラー見届け人。2024年は「厨房のありす」(NTV系)、「三屋清左衛門残日録8」(日本映画+時代劇 4K)に出演。他にも映画やバラエティなど、活躍は多岐にわたる。
①白洲 梓 著『魔法使いのお留守番(上)』
冒険から帰ってきた。
大陸の最果て、青い海の向こうの終(はて)島(じま)には、竜の生き残りのクロと青銅人形のアオが暮らしており、世界で一番と言われる大魔法使い・シロガネの帰りを待っている。
私は、先ほどまで、透明人間となり、彼ら二人とそこに偶然流れ着いた記憶喪失の少年・ヒマワリの暮らしや冒険を密やかに見つめていたのだ。
心奪われる本と出会った時、透明人間の感覚はよりクリアになる。物語の全てを俯瞰できる、透明人間の視点。全てを見聞きできる読者は、スパイの取り引きも、秘密の恋も、殺人現場で起きたことも、登場人物の心のうちも知ることができる。豊かな表現力によって物語に引き込まれ、自分がどこにいるのかわからなくなればなるほどよい(ヒマワリが魔法画の中に入って、ともにダンスを踊るように)。それを味わうことが、本を読むことにおいて一番の幸福であり、本の虫たちが貪(むさぼ)るように言葉たちを渇望してしまう要因なのだと思う。