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朝比奈あすか「なぜいじめが起きるのかを考えるきっかけに」新作小説『普通の子』は、いじめ問題に正面から切り込んだ意欲作【インタビュー】

  •  ※本記事は、雑誌『ダ・ヴィンチ』2025年2月号からの転載です。


    朝比奈あすかさん

     中学受験を題材にした『翼の翼』、教室という狭い世界で子どもたちが懸命に生きる『君たちは今が世界』などで、小学生の葛藤や希望を描いてきた朝比奈さん。その新刊は、いじめ問題に真摯に向き合った渾身作だ。


    取材・文=野本由起 写真=冨永智子


    「ずいぶん前から、いじめを主軸にした小説を書きたいと思っていました。大人でも、集団で誰かを異質な存在とみなすことがありますが、子どももまた残酷になるのではないか。子どもたちがその世界をどう生きるのか、書いてみたくて。それに、近年いじめの事案が増え、道徳の教科書にも影響を与えるそう。こうした現実も、執筆の動機になりました」


     近頃はデジタルツールの発達により、子どもの世界がますます見えづらくなっているという側面もある。


    「連絡網が紙で配られていた時代は、親同士が連絡を取りやすく、我が子がよそでどういう感じなのか情報が入ってきました。今は名簿も連絡網もなく、親同士がかかわりを持つには、PTAの役員をしたり、保護者会に出席してLINEグループを作ったり、と、皆さん努力されているようです。でも、多忙な人、人付き合いが得意ではない人は、ネットワークから取りこぼされてしまうかもしれませんよね。いっぽう、子どもは学校から支給されたタブレットを使って、大人には思いもよらないことをしたり。子どもの世界には、大人の死角になっている人間関係がある。そういう現状、ちょっと気味の悪さがある現代性も、小説に取り入れたいと思いました」

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