あなたのパートナーが不倫や浮気をしていたらどうするだろうか。本作の主人公・イチカは結婚して2年目になるOLである。ある日、嫌いな同僚が自分の夫と不倫していることを知り、復讐するまでを描いたのが『同僚が私の夫と結婚するらしいので、最高の仕返しを贈ります』（しろみ/KADOKAWA）だ。

　物語は同僚が「彼氏がプロポーズしてくれない」と言いながら写真を見せてくるところから始まる。そこに写っていたのは、なんとイチカの夫だった。驚いたことに、この同僚はイチカが結婚する前から夫と交際しており、夫が既婚者であることも知っていた。しかし、彼の妻がイチカであることに気づいていなかったのだ。

　口が軽い同僚は、不倫の詳細を無邪気に話し続ける。「デートの場所」「ホテルのエピソード」などを得意げに語るその姿には、後ろめたさや罪悪感はまったく見られない。それどころか、「妻に魅力がないから浮気される」とでも言いたげな態度が憎たらしい。イチカは冷静にその会話を記録し、仕返しの準備を進めていくのだった。

　本作の魅力は、イチカが悲観的にならず、「どっちがバカか思い知らせてやろうじゃん」と、むしろたくましく2人に立ち向かう姿だ。不倫の証拠を集めるために、嫌いな同僚とあえて仲良くしながら計画を進める。イチカの知性としたたかさには、思わず応援したくなる。

　特に印象的なのは、夫が「偽装離婚」を持ちかけるシーンだ。イチカは知らないふりをして従順な妻を演じ、さらにはそれを楽しんでいるような描写がされている。辛い状況にもかかわらず、ユーモアを交えながら機転を利かせる彼女の姿には、多くの読者が共感するだろう。

　果たして、イチカが仕掛ける「最高の仕返し」とはどのようなものなのか。不倫夫と無神経な同僚にどんな結末が待ち受けているのか。機転の利く彼女ならではの計画から目が離せない。スカッとする展開を期待したい1冊だ。

文＝ネゴト / 森ソタカ