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森見登美彦氏の名作『夜は短し歩けよ乙女』。乙女と先輩の「恋と青春」を彩る京都の四季に憧れる! #京都が舞台の物語

  • 夜は短し歩けよ乙女
    『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦/角川文庫)

     京都という街は、時を越えた憧憬を人々に抱かせる。神社仏閣の静寂、歓楽街である木屋町や先斗町の喧噪、鴨川の河川敷に等間隔で座るカップルたち。京都で学生時代を過ごした人間には、ただの風景以上の意味を持ち、“京都の生活”に憧れる人にとっては夢を映す場所となる。『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦/角川文庫)は、そんな京都を舞台に、大学生たちの青臭さと恋心、そしてノスタルジーが交錯する青春を描いた物語だ。


    「黒髪の乙女」に想いを寄せる「先輩」は、彼女の気を引くため不器用に秋波を送り続ける。一方の乙女は、先輩の想いに気付くことなく、行く先々で出会う珍事件を自由気ままに楽しんでいく。夜の先斗町、下鴨神社の古本市、大学の学園祭――先輩の一途な気持ちは、果たして彼女に届くのか。


     大正時代の流行歌の一節、「いのち短し恋せよ乙女」をもじって名付けられた本作は、「黒髪の乙女」と「先輩」の視点が交互に切り替わりながら進んでいく。全4章で構成され、章ごとに春夏秋冬が移り変わり、それぞれ季節を象徴する京都の街並みが舞台となっている。

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