“写真の中の戸塚純貴”に、くどうれいんが物語を描く。 「実験やたくらみという言葉がふさわしい一冊です」
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作家として岩手の地でみずみずしい文章を創り出しているくどうれいんと、2024年の連続テレビ小説(朝ドラ)『虎に翼』でヒロインの同期・轟太一役を熱演し大きな話題を呼んだ俳優・戸塚純貴。作家と俳優という異なるフィールドで活動する2人が、写真とショートストーリーで交差する――。
『登場人物未満』は、写真集でもなく、小説でもなく、くどうれいんと戸塚純貴だからこそ生み出すことができた、「一人の人間の本当の姿」を探す挑戦的な一冊だ。
本作のショートストーリーを担当したくどうれいん氏に話を聞いた。
(取材・文=河村道子、撮影=富永智子)
互いの困惑みたいなものが
面白い相乗効果になっている――戸塚さんの写真をもとにくどうさんが書いたショートストーリーは、架空と現実の間を漂うような味わいでした。約1年にわたる「ダ・ヴィンチ」での連載が、こうして一冊の本になった今、どんな思いが過っていらっしゃいますか?
くどうれいん(以下、くどう):まず戸塚さんの写真があり、それに合うストーリーをつくる、さらに文字数もとても限られていたので、はじめはすごく制約みたいなものを感じていたんです。しかも連載中はちょうど朝ドラ(戸塚さんが轟太一を演じた連続テレビ小説『虎に翼』)が盛りあがっていた頃で、戸塚さんのファンの方にも楽しんでいただきたい、という気持ちも働いて。けれどこうして一冊の本にまとまってみると、自分はすごくのびのびとしながらストーリーを書いていたんだな、ということに気付きました。